「二都物語」チャールズ・ディケンズ

 

べにはこべを読み終わって、フランス革命への興味がむくむくと湧いてきたのでなんかないかなー、と探してたら書店で見つけたから購入。そういやノーランのダークナイト・ライジングもこれの影響を受けているとどこかで読んだ記憶があった。しかし、名作文学をほとんど避けて歩いてきた人生の中でディケンズと言われてもクリスマス・キャロルの人くらいのイメージしかなかった(クリスマス・キャロルも最近まで妖精とかが出てきてクリスマスに奇跡を起こすハートフルストーリーだと思い込んでた)。長いし地味でお固い内容だったら最後まで読めるかなあ、と恐る恐る読んでみると嘘みたいにスラスラとラストまで辿り着けた。しかもめちゃくちゃ面白かった!

フランス革命が起こる少し前。イギリスでひとりで暮らすルーシー・マネット嬢の元に銀行家のローリーが現れ、死んだと思われていたルーシーの父が祖国フランスのバスティーユ監獄で長年無実の罪で囚われていたことを知る。助け出された父を迎えにパリに渡ったルーシーが再会した父は長年の虜囚生活に精神を変調させ、医師だった頃の姿は見る影もない。涙ながらに再会を喜ぶルーシーは父をイギリスに連れ帰り、献身的に看病し、やがて父は少しずつ以前の姿を取り戻す。

そんなマネット親子のまえに二人の男が現れる。かたやフランス貴族でありながら自らの出自を呪い国を捨てたチャールズ・ダネイ。かたや優秀な弁護士でありながら人生に絶望し自堕落な生活を送るシドニー・カートン。容姿が瓜二つであること以外共通点のなかったこの二人の男はとある事件を通じてルーシーに愛情を抱くようになる。しかし、フランスでは革命が起こり、三人の運命は過去の因縁とともに時代の波に飲み込まれて行く…。

とにかく素晴らしいのはこの作品に溢れるエンターテイメント性である。怒れる市民によってバスティーユが陥落する様子の迫力はもちろん、前半に積み上げられた伏線が効いた緊張感漂う法廷劇、恐ろしい雰囲気がよく出ている暗殺事件、そして男女のロマンス。とても170年近く前に書かれたとは思えないくらいエンターテイメント性に富んでいる。地味だとかお固いなんてカケラも思わなかった。

気品のある高潔な紳士ダネイと放蕩無頼の義の男カートンのキャラも対照的でそれぞれ別の魅力がある。周りを固めるキャラも個性的で素晴らしい。

巌窟王とかロミオ×ジュリエットみたいな感じで二都物語もアニメにしたらすごい映えるんじゃないかな、とか思ったり。

いろいろ言ってきたけどなにより素晴らしいのは物語のラストだ。革命の中で市民の集団ヒステリー的な残虐性が主人公三人を悲劇的な境遇に落とし込んで行くが、その中で主人公のひとりがとった行動があまりに高潔で涙を誘う。小説を読んでて泣いたのは久しぶりだった。

きっと今後繰り返し読むことになるだろうと思う。とにかく語るに尽きない素晴らしい一冊だった。

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