「体育館の殺人」青崎有吾


私のこれまでの長くも短くもない人生の中で1日に2冊の本を一気に読み切ったことがあっただろうか。私が1番文学少年というか路地裏ラノベ少年をやっていたのは中学2年のときだったが、それでもあまりそういう経験はなかったと思う。少なくとも記憶にない。でも、これからは今日の日のことをにやにやと自慢げに言い出すと思う。「ぼく、探偵は教室にいないと体育館の殺人を同じ日に読んだんですよ」なんて。

体育館の殺人は探偵のいない教室や屍人荘の殺人と同じく鮎川哲也賞大賞作品である。作者の青崎有吾が「平成のエラリー・クイーン」と呼ばれているロジック派の本格ミステリのルーキーであることは知っていたし、ツイッターのアカウントも知っていたけれどその著作は今日まで手に取ることはなかった。それは主人公がオタク高校生探偵というキャラ小説っぽいレッテルをなんとなく避けてしまっていたからだが、そんな自分を思い切り張り倒してやりたい。そもそも本家のエラリー・クイーンだってそうじゃないか(褒め言葉)。私のそんなくだらない杞憂が一瞬で消し飛ぶくらいに本作は平成のエラリー・クイーンと呼ばれるに相応しい傑作だった。すなわち快刀乱麻のロジックの作品だ。

風ヶ丘高校の女子卓球部に所属する柚乃は旧体育館の舞台上で刺殺された放送部部長の死体を発見する。現場は開放的な体育館でありながら、降りしきる雨と人の目と施錠された鍵によって隙のない完全な密室となっていた。唯一の容疑者として疑われた卓球部部長を救い出すために柚乃は文化部部室に住み着いた学校一の天才で探偵である裏染天馬に真相の解明を依頼する。しかし、天馬は重度のオタクでとてつもない変人だった…。

本作でまず最初に撃ち抜かれたのは主人公の名前が最初に登場する瞬間の劇的さである。学校のいう舞台を最大限に活かしたその演出はうっとりするほど素敵だ(その後のご本人登場はあまりに残念なわけだが)。主人公の裏染天馬は典型的なエキセントリックな非常識オタク名探偵だ。作品でアニメオタクが登場するのが苦手な人もいると思うが作者のセンスと匙加減がいいからかそれは気にならなかった(いい声の登場人物に松岡由貴を持ってきたところとか。あと戯言のキムチ丼のシーンとか誰が覚えてるんだよ)。とにかく裏染天馬がかっこいいのだ。今すぐシリーズを追いかけたくなるくらいに。

そして名探偵の魅力を十二分に映えさせる徹頭徹尾ロジックの推理展開も圧巻だ。本作の推理はある一つのなんの変哲もない証拠品から始まるのだが、その一つの証拠品でこれだけ推理が拡がるのかと目を剥くばかりだ。そして密室が開け放たれる瞬間。その快感には震えた。

個人的にもう一つ恐ろしいことがある。作者の青崎有吾は1991年生まれである。私と同い年なのだ。これには凹んだ。私より年下のアスリートや芸能人、それこれ声優などはもはやこの世にうじゃうじゃと溢れているが、これが最近一番凹んだ。こんなに面白くて隙のない作品を書く人が平成3年生まれにいるとは。平成3年の誇りだ。綺羅星だ。心の底から応援したい。

昭和の終わりにこの世に出た綾辻行人十角館の殺人を皮切りに始まった館シリーズ。その名前をユーモアたっぷりに受け継いだ平成の館シリーズとも言えるかもしれない(次は水族館の殺人だ)このシリーズはその名前に恥じない傑作だった。今からミステリを読もうとしている全ての人に自信を持ってオススメできる。必読です。

 

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書影。田中寛崇のイラストが素敵だ。

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言わずもがななエラリー・クイーン。ひとつの証拠品から導かれる快感はエジプト十字架っぽさがある。と思う。

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言わずもがなな十角館の殺人。名前は似てるが雰囲気は似ても似つかない。

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作中で触れられていたシリーズその1。ヒロインの名前が一緒。

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作中で触れられていたシリーズその2。私もクビシメが一番好き。剣呑剣呑。

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作中で触れられていたシリーズその3。やたらと思わせぶりなこと言うことで印象深い。最後どうなったんだろ。

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引きこもりの名探偵、学園内での密室殺人といえばこれを思い出す。イラストは変ゼミTAGRO。これも好きだったなあ。

 

 

 

「探偵は教室にいない」川澄浩平

 

昨年はやはり屍人荘の殺人の年であった。ネタバレ厳禁の斬新な基本設定(その禁はいまだに守られている。ミステリ畑の人間の義理堅さに頭が下がる)に包まれた確かな本格ミステリ。口コミで人気に火が着き、普段は鮎川哲也賞作品をスルーするような書店でも大々的に平積みされていた。今年も鮎川哲也賞の季節がやってきた。今年の大賞は特殊長編ミステリであった屍人荘と翻って、学校を舞台にした日常の謎モノの短編青春ミステリ連作だ。その出来は、昨年に引けを取らなかった。いや、単純な好みの話をするなら今年の方が好物で、半日で一気に読み終えてしまった。

北海道に暮らす14歳の海砂真史には一風変わった幼馴染がいる。幼稚園の頃から大人びていた彼によく泣かされていた真史はとある事件から9年ぶりに彼と再会を果たす。彼の名は鳥飼歩。甘いケーキをこよなく愛する彼は中学2年生になってから学校に通っておらず、その傍若無人の非常識ぶりは拍車がかかっていた。しかし、真史から断片的にもたらされる情報から鮮やかに事件の推論を形作っていく…。

まず事前情報から得られた第一印象は「また随分とありきたりな…」という感じだったことは否定できない。学園の日常の謎モノと言えばパッと思い浮かぶものでも米澤穂信古典部シリーズや小市民シリーズがあるし、そもそも学生探偵モノなら2012年の大賞だった青崎有吾の体育館の殺人の裏染天馬シリーズや太田忠司の高校生探偵甘栗晃シリーズとかもある。北海道を舞台にしたミステリもアニメ化された太田紫織櫻子さんの足下には死体が埋まっているがあるし、東直己探偵はBarにいる(なんとなく名前が対比的なのも偶然にしても面白い)もとにかく有名だ。

とにかく先人が歩きに歩きまくった踏みならされた道、という感じだ。ミステリは既視感との戦いだ。賞レースではありふれたジャンルの作品はそれだけで厳しい。しかも今年も選考委員には日常の謎モノの大家でもある北村薫がいるではないか。ここに飛び込んでいった作者の度胸たるや!しかし、本作は選考委員の満場一致で大賞が決まったらしい。それでは、と読んでみたらこれがめちゃくちゃ面白かった!

まず青春ミステリの名に恥じない圧倒的な爽やかさ、瑞々しさが挙げられる。登場人物の視点や悩み、怒りも年相応で、その語り口は変に捻れることもなくストレートだ。起こる事件もラブレターの差出人を探すフーダニットや合唱コンクールの伴奏を降りた友人のホワイダニット、家出少女の居場所当てなど中学生の枠を決して飛び越えることはなく、自分が中学生だったときを思い返させる(そうだよね、合唱コンクールって変な外交政治みたいなとこあるんだよね)。そしてなにより素晴らしいと思うのが各話の幕引きの仕方がべらぼうに巧い。

魅力的なキャラクターもそのストーリーに大きく力を与えている。探偵役の鳥飼歩もその口ぶりこそ少し実年齢から離れた老成っぷりを感じるが、エキセントリックは面は最低限に抑えられていて、自分の周りにいたかもしれない頭がいい同級生レベルになっている。彼は真史たちとは違う学校に通い(通っていないが)、現場には一切居合わせないいわゆる安楽椅子探偵(その割にはよく出かけている)で、真史たちの話を聞くだけで推論を組み立てていく。「推論だけで全てを見通すことはできない」と前置きしながらもその謎を解明していく手腕は実に鮮やかで心地いい。そもそも推理という言葉を使わず推論って言ってるのが謙虚でいい。ドライそうでいてほどほどにお人好しで話がわかる感じなのも好印象だ。事件の中心となる真史を含めた4人のバスケ部の仲良しメンバーも個性がばらけていてバランスがいい。

もっと流行りのキャラミスとしての側面を強くすることもできたろうと思う。それでもあくまで地に足が着いた、抑え目な文章でそっと語りかけてくるような物語は読んでいて心地よかった。そして、決して派手でない謎を論理的に解き明かすことで人間の内側を雄弁に語るこの楽しさは日常の謎モノの醍醐味だと思う。昨年の「こんなのアリ!?」という驚きとは180度違う方向からミステリの楽しさを改めて教えてくれる素晴らしい作品だった。屍人荘みたいに普段ミステリに馴染みがない人の元へもこの本が届いてくれたらいいなあ、と思った。続編もあり得そうなので作者の次作を期待して待ちたい。

 

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書影。表紙からもうエモい。

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昨年の鮎川哲也賞大賞の屍人荘の殺人。続編の魔眼の匣の殺人が刊行決定!

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2012年の大賞作品の青崎有吾の体育館の殺人。まだ読んでないんですよね…。

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探偵だった父の代わりに探偵をやることになった高校生・甘栗晃が主人公の太田忠司の甘栗と金貨とエルム。続編待ってるんだけど作者曰く大人の事情で難しいんだってさ…。

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いや吹奏楽わい!?となったけどなんとなく全話観てしまった青春ミステリ・ハルチカ。成島さんが可愛かった。

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北海道ミステリ、櫻子さんの足下には死体が埋まっている。アニメは全部観た。

 

 

 

「埠頭三角暗闇市場」椎名誠


舞台は近未来。中・韓連合による大規模ゲリラが同時多発地盤崩壊作戦を決行し、十大都市全域が崩壊した「大破壊」を経た日本。経済も政治も中・韓連合に乗っ取られ、微細生物や病原菌がうようよする黒い雨が降り、異常進化した人語を解するヘンテコな野生生物や魚人やアンドロイドなどが普通に暮らす社会。大破壊の際に倒壊したビルと埠頭に打ち上げられた豪華客船が奇跡的にぶつかり、お互いを支え合うことで生まれた三角形の空間。人々はそこに闇市を形成し、さまざまな違法ビジネスと生活を営むようになる。その名を埠頭三角暗闇市場といった。

傾いだビルの中で怪しげな生体融合手術を生業とする闇医者・北山のもとに絶世の中国美女が現れる。美女は復讐のためにある生物を自分の体に移植してほしいと北山に依頼する。また東京湾に浮かぶ首都警察の悪徳警官・古島はパトロール中に人語を話す口汚い犬を拾い、さらにアナコンダの精神を持ったアナコンダ男の始末までも負う羽目となる。

二人はお互いに相関しながら、やがてトーキョーを揺るがす大事件へと関わっていくこととなる…。

読み終わって一言。なんじゃこりゃ、って感じだ。SFであるのは間違いない。中国語が溢れて、人体に有害な雨が降りしきる街と言うとブレードランナーみたいだが、それを期待して読むとちょっと違う。ハードボイルドさはない。ブラックマーケットを舞台にしたノワール感もなければ、国家的陰謀が絡むスリラー感もない。何か大きな事件が起こっていることは感じさせるものの、それもなかなか前へと進まない。進んだかと思うと今度はとんでもない方向へと突っ走っていく。そして、幕切れは潔いほど唐突だ。なんじゃこりゃ。

作品としての骨格は歪みまくっていて端正とはとても呼べる代物ではないが、この作品の魅力はその物語を形作ってる特異なパーツだと思う。変な職業の変な人間と変な生態系の変な生物と変な科学技術が淡々とゆるく描かれていく。しかし、これがなかなか読ませる。人と動物の精神を入れ替える手術を得意としている北山の手術エピソードはグロテスクだがユーモアに溢れているし(ウツ病の愛人と淫乱なチンパンジーの精神を入れ替えた金持ちが腎虚で死ぬ話が好き)、彼と仲の良いウージー(禿頭猿にカワウソの遺伝子が混じった変な丁寧語を話す生物)との交流も心温まる。

久正人の神やUMAや妖怪などが人間みたいに暮らしているエリア51ギレルモ・デル・トロヘルボーイ/ゴールデンアーミーのトロールの市場、金田一蓮十郎ジャングルはいつもハレのちグゥの変な生物がいるジャングルやグゥの腹の中が好きな人は楽しめるんじゃないかと思う。変な作品だが、なんだか楽しかった。

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書影。イラストが作中あちこちに挟み込まれているので突拍子のないSF描写もイメージがしやすい。

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久正人エリア51。世界中の神や妖怪、UMAが集められた街を舞台に人間の女探偵マッコイが大暴れする痛快傑作。ラストは大団円だが悲哀に満ちてる。ヘルボーイ原作のマイク・ミニョーラの影響が大。作者の新作のカムヤライドも面白いよ!

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ギレルモ・デル・トロヘルボーイ/ゴールデンアーミー。妖精や怪しげなアイテムが売買されるトロールの市場はこれだけで一見の価値ありの圧巻のセット。オタクの宝箱。

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金田一蓮十郎ジャングルはいつもハレのちグゥ少年ガンガンの黄金時代のギャグ漫画。変な生物が当たり前のように生息するジャングルが舞台。後半の人間ドラマも良かったけど前半の破茶滅茶ギャグの方が好きだったな。この時代のガンガンのギャグ漫画にはマスコット的な変な生物が溢れていた気がする。

 

「帝都探偵大戦」芦辺拓


「いいか、おれたちをここまで連れてきたものーー」

「お前たちが捕まえられるきっかけとなったものーー」

「誰にも知られることなく、見られなかった悪事をーー」

「白日の下にさらけ出し、裁きにかけるに至ったものーー」

「貴様らには未知であろう、その正体を教えてやろうかーー」

続いて彼らは、異口同音に叫んだ。

「そう、それは……『推理』というものだよ!」 (黎明篇より)

 


名探偵たちの競演。この企みに心踊らないミステリ好きは少なくあるまい。同一作者の複数の探偵の競演も美味ではあるが、それ以上に別の作者の名探偵がひとつの作品で顔を合わせるスペシャル感といったらたまらない。日本においても赤川次郎が「名探偵なんか怖くない」において明智小五郎エラリー・クイーンエルキュール・ポアロを競演させたし、ゲームでも名探偵コナン金田一少年のコラボや逆転裁判成歩堂龍一レイトン教授のコラボが人気を博したのは記憶に新しい。

作者の芦辺拓は作者をして日本一地味な名探偵と称される森江春策のシリーズなどを書く本格推理作家である他に戦前戦後の探偵小説や少年少女小説のアンソロジーを多く刊行するなど編纂者として顔を持つ。さらにこれまでにも「明智小五郎金田一耕助」や「真説ルパン対ホームズ」などの複数の名探偵が登場する作品のパスティーシュを手がけている。本作はその作者のある意味集大成と言える。何故ならば本作には50人にも及ぶ名探偵が縦横に活躍する大パスティーシュ作品であるからだ!

 


江戸の川に女の死体が上がった。豪奢な着物を纏った女の死体には同じ場所を二回刺した傷が遺されていた。さらに化け猫娘のように行灯の油を舐めていたという商家の一人娘の失踪事件、大阪の御金蔵破りなどさまざまな謎が立て続けに起こる中、三河町の半七、銭形平次、若さま、顎十郎などの江戸八百八町と大阪の名探偵たちが大捕物に立ち上がる。(黎明篇)

日中戦争の最中、国内の探偵たちはその活躍の場を失っていた。法水麟太郎は黒死館以来の知人の検事から同盟国のナチス・ドイツが密かに追い求める輝くトラペゾヘドロンと呼ばれる謎の宝玉の調査を依頼される。宝玉を研究していた学者は密室で不審死を遂げており、宝玉を収蔵されている国立博物館には謎の黒い人影が出没していた。法水は科学探偵の帆村壮六や新聞記者の獅子内俊二などと協力して調査を開始するが…。(戦前篇)

大空襲の傷跡が未だ癒えぬ東京。戦後の民主主義と自由の中から新たな名探偵が多く産声を上げ始めた頃、東京大学医学部の神津恭介は頭と手足があべこべになった奇妙な死体と対面する。さらに死体の口内からはジグソーパズルが発見された。ブラジル帰りの富豪が陸の上で海水によって溺死する奇妙な事件においても同じパズルが見つかる。そして明智小五郎不在の中、小林少年は怪人二十面相を思わせる盗みの予告状と対峙する…。(戦後篇)

 


三つの時代に分けて、先述の通り50人もの探偵たちが競演する本作はとにかく豪勢な作品である。そして、それぞれの名探偵の特徴の捉え方が上手く、作者の探偵小説愛の深さを窺わせる。

まず黎明篇。名探偵という言葉もなかった江戸時代。科学捜査なんてものはもちろんなく、開放的な日本家屋においては密室殺人は難しく、さらに時間の感覚が大らかでアリバイという概念そのものの存在が乏しい。そんなミステリが成立しにくい時代の中で巧みにミステリ作品を書き上げてきた名手たちの名探偵が同居し(半七と銭形の「おお、明神下の。ありがとう」「どういたしまして、三河町の」というやりとりのなんと粋な事か!)、大捕物を演じ、油断し切った悪党たちに高らかに推理の神力を謳う本編は本作屈指の爽快感がある。

次に戦前篇。文明開化によってもたらされた自由な気風と舶来の科学捜査などによってより個性が発揮されるようになった名探偵たちであるが、時は日中戦争の真っ只中であり、国内の殺人事件は非国民の所業として捜査も報道もご法度となった時勢の中で探偵たちは活躍の場を奪われ、国によって死を宣告されたに等しい状況にある(江戸川乱歩も発禁処分を受けて創作活動を停止していたし、彼の明智小五郎は海外で国のために働かされていた。金田一耕助も兵隊に取られていた)。その閉塞感のある社会の中でも名探偵たちはその鋭い眼を曇らせることはなく、戦争に邁進する国際的な陰謀を推理の力で立ち向かっていく。またトラペゾヘドロンなどのクトゥルフ神話ゆかりのアイテムが多く登場することから超常的な展開になるかと思いきやこれが実際の歴史とうまく融合させたストーリーに発展させていく作者の腕の巧みさに舌を巻く。実際に親友同士だった小栗虫太郎法水麟太郎海野十三の帆村壮六がタッグを組む展開も熱い(文系オタクと科学オタクの対照的なコンビ!)。そして久生十蘭の真名子明が出てきたのも嬉しい。

そして戦後篇。軍国主義から解放され、再び探偵小説に日が差した自由な時代。特徴は少年少女探偵と警察官探偵の隆盛である。作者によると前者は戦争を止めれなかった大人たちからの子どもたちの自立の現れであり、後者は海外から入ってきた映画と民主警察の誕生が大きく影響しているそうだ。とにかくそのバリエーションの多さに驚かされる。少年探偵と言えば小林少年、というイメージを覆されること請け合いだ。今日の本格ミステリと地続きになった時代の物語である。

戦前、戦後篇には戦時中の閉塞感と悲惨さが通底している。現代でも多くのミステリ作家の中には反戦を訴え、表現規制を厳しく批判する気風があるように感じる。それは江戸川乱歩横溝正史などの日本の探偵小説の礎を築いてきた推理作家たちが戦時中にいかに不遇な扱いを受けてきたかをこの時代の作品から体感しているからかもしれない。作中には乱歩が東京大空襲の様子を描いた防空壕の一文が挿入されている。

さすがにこれだけの名探偵が登場しているので全員に均等に活躍の場が与えられてはいない。探偵小説に馴染みが薄い人にとっては誰が誰だか見分けがつかない、ということもあるだろう。私も半分以上の名探偵とははじめましてだった(その点、巻末の名探偵名鑑の収録はありがたかった)。しかし、この作品で出会った名探偵たちに興味を抱かない、ということはあり得ないと思う。そして古典名作の復刊が目白押しの昨今、彼らに会いに行くのは以前より難しくない。本書は貴重な名探偵との出会いの場を提供してくれる一冊となっている。ぜひ手に取って推しの名探偵を見つけてもらいたい。

 

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書影。創元クライム・クラブから。アオジマイコの描く法水麟太郎と帆村壮六がかっこいい。

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日本四大奇書として名高い小栗虫太郎黒死館殺人事件

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海野十三の帆村壮六(シャーロック・ホームズのもじり)が活躍する蠅男。疑似科学的なSF要素が強く、「また帆村、少々無理な、謎を解き」なんて川柳もあるらしい。

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小説の魔術師こと久生十蘭の魔都。私の推し名探偵・真名子明警視が登場する。ごった煮みたいな怪作。

 

 

「そして五人がいなくなる」はやみねかおる

 

自分が人生で一番最初に読んだミステリ、一番最初に出会った名探偵が誰か、あなたは覚えているだろうか。江戸川乱歩明智小五郎か、コナン・ドイルシャーロック・ホームズアガサ・クリスティのエルキュール・ポワロか。青山剛昌江戸川コナン天樹征丸金田一一かもしれない。私はもはやその答えを覚えていないが、こう答える人も多いのではないだろうか。はやみねかおる夢水清志郎だ、と。

本書を第1作とする名探偵夢水清志郎事件ノートといえば青い鳥文庫で大人気の児童向けミステリの代名詞であり、NHKで連続ドラマとして実写化もされた人気作である(マナカナ和泉元彌が主演だった)。小学校の図書館にも置いてあったし、教室で読んでいるクラスメイトも多かった。私の家にも母親が私の暇つぶしにとどこかから買ってきた一冊があったように記憶している。

しかし、私はこのシリーズをその一冊以外読んだことがなかった。このシリーズはかいけつゾロリを貪り読んでいた男子を尻目に女子たちの間で先に火が着き、なんとなく後追いで手を出すのに気恥ずかしさがあったからだ。教室でラノベを堂々と読むようになるようなオタクとしてまだ開き直れていなかった当時の私はこのシリーズにハマるきっかけを逃してしまった。それから早20年近く。今回、講談社文庫化されていた本作をたまたま本屋で見かけたので、懐かしさとともに手に取ってみることにした。

エイプリルフールに岩崎家の隣の幽霊屋敷に奇妙な隣人が越してきた。黒いスーツにサングラスをかけたひょろひょろな男の名前は夢水清志郎。この男は常識と生活能力は皆無ながら、類稀なる推理力を持ち合わせており、自らを名探偵と名乗る変人だった。亜衣、真衣、美衣の三つ子の岩崎三姉妹に教授と呼ばれ懐かれた彼は夏休みに隣町に出来た巨大な遊園地に遊びに行くことに。しかし、そこで開かれたマジックショーで“伯爵”と名乗るマスクの男が観衆の目の前でひとりの少女を消してしまう。「あと四人の子どもが消える」と宣言した伯爵に自ら挑戦する教授。しかし、事件は伯爵のシナリオ通りに進行していき…。

まず本格ミステリとしてきちんと成立していることに驚かされた。児童向けだからと馬鹿にしてかかるつもりは毛頭なかったのだが、それでもある程度のとんでもトリックは覚悟していた。しかし、子どもたちが衆人環視の中で鮮やかに消えていくトリックの数々はどれも地に足がついた本格仕様で、語り口を変えれば大人向けの作品としても十分に通用するものばかりだ。かといって複雑な解説が待っているかというとそうでもなく、子どもがきちんと噛み砕けるように丁寧かつ分かりやすく語られているのも好印象だ。

そして、全編を通して中学生の主人公・亜衣によって語られている物語が素敵だ。名探偵の夢水清志郎のどうしようもない欠点や物語としてツッコミどころのある展開も子どもの目線で語ることでコミカルかつ無理なくすっと読み進めることができ、ストレスを感じさせない。それでいて、必要な伏線はきちんと織り込まれている。これはなかなか驚異的だ。

猫丸先輩でお馴染みのミステリ作家・倉知淳は巻末ではやみねかおるにこんな応援メッセージを寄せている。

 


「子供騙し」という言葉がある。

しかし小説の読者という点では、子供を騙すのはとても難しい。なにしろ子供は正直だ。

つまらなければすぐに飽き、途中で投げ出す放り出す。大人の読者のように「きっと最後に大きなオチがあるだろうからな、ラストに期待しよう」などと我慢して付き合ってくれない。

そんな少年少女読者を相手取り、ベストセラー街道を驀進する、この「夢水清志郎」シリーズが面白くなかろうはずがない。

 


自らも江戸川乱歩の見せる赤い夢に魅力されたかつての子どもだったはやみねかおるが溢れんばかりに抱えたミステリ愛を、今の子どもたちに伝える快作。大人も楽しめる作品だった。

 

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書影。イラストはBLOOD+のキャラデザで有名な箸井地図

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村井四郎によるイラストの青い鳥文庫版。こっちの方を学校の図書室で見た人も多いのではないだろうか。

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NHKドラマ愛の詩枠で放送された双子探偵。岩崎三姉妹はマナカナ主演で双子に変更された。なぜか真衣が関西弁だった記憶がある。

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作者のもう一つの代表シリーズ、少年名探偵・虹北恭助の冒険。こっちの方はよく読んでた。響子ちゃんがかわいい。イラストはやまさきもへじ。

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青い鳥文庫もう一つの児童ミステリ・パソコン通信探偵団と夢水清志郎の共演作。我が家にあった。作者のスピンオフ作品の主人公、怪盗クイーン初登場作でもある。

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ネズミの名探偵チビーと子猫の助手ニャットが活躍する新庄節美の名探偵チビーシリーズ。私の一番最初の名探偵かもしれない。

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夢水清志郎のように探偵が奇術に傾倒している例はいくつかあるが美貌の奇術師・曾我佳城はその最たるものだろう。奇術師とミステリ作家のふたつの顔を持つ泡坂妻夫の連作短編集。

 

 

 

「キッド・ピストルズの冒瀆 パンク=マザーグースの事件簿」山口雅也

 

山口雅也は私にとって他に変え難い特別な作家の一人である。彼のデビュー作である生ける屍の死は、死んだ人間が生き返る世界という死人に口なし、故に謎有り、という殺人事件の大前提を高らかに蹴っ飛ばした怪作であり快作であった。その衝撃はミステリを読み始めたばかりの私にとって計り知れず、こんなのアリなんだ!という読後の幸福感は未だに忘れられない。

そして、この度入手困難であった作者の代表シリーズが一気に復刊されることが決まった。その名はキッド・ピストルズ。本作はその第1作目である。

舞台は現実世界と少しだけ異なるパラレル英国。その世界ではシェイクスピアハムレットは喜劇であり、コナン・ドイルはホームズ第五の長編を書き、ジョン・レノンは暗殺されず、ポール・マッカートニーはステージ上の事故で死んでいる。社会情勢は劣悪なことは変わらないが、その内情はより深刻で、犯罪はより複雑で不可解なものが横行していた。警察機構はその事態を打開するべく警官の採用の門戸を広くしたが、結果として失業者、不良(パンク)や前科持ちまでもを採用してしまうことに。犯人逮捕のために拷問までをも平気でやってのける警察の威信は地に堕ち、市民は事件解決を探偵士と呼ばれる警察より捜査に優先権を持つ国家資格を持つ探偵に頼るようになり、法律によって首都警察(スコットランド・ヤード)は探偵士協会の下部組織とまでなってしまう。

主人公のキッド・ピストルズとピンク・Bはそんな嫌われ者のスコットランド・ヤードのパンク刑事。奇妙な服装と奇矯な振る舞いを見せる彼らは傲慢な探偵士たちの下働きをさせられながら、キッドの明晰な頭脳とピンクのネジの外れた行動によって探偵士たちが頭を悩ますナッツ(そんな馬鹿な)な事件を解決していく…。

本作の特徴のひとつの大きな試みがまず挙げられる。それはすべての話にマザーグースがモチーフとして取り入れられていることだ。マザーグースといえば英国で最も有名な童謡であり、キャロルのアリスの中に登場するハンプティ・ダンプティやロンドン橋落ちたなどの歌が有名だが、もうひとつの顔として、ミステリの演出道具としての顔がある。

マザーグースが登場する作品といえば誰がコマドリを殺したの?をモチーフにしたヴァン・ダインの僧正殺人事件と10人のインディアン(黒人)をモチーフとしたクリスティのそして誰もいなくなったが真っ先に挙げられる。他にも作者がクイーンに傾倒するきっかけともなった靴に棲む老婆など多くの作家がこの童謡を作中の殺人事件の核として物語を紡いでおり、ミステリの世界では最もポピュラーな歌と言えるかもしれない。

無邪気でシュールな不気味さもあるこの童謡は登場人物や読者の恐怖を煽る見立て殺人のBGMとして永らく歌い継がれてきたが、本作ではこの歌をただのお約束や添え物として使うのではなく、実に効果的に話の本筋に織り込んできているのが見事だ。そして、落語のサゲのように時にユーモラスに、時に物悲しく物語の幕を引く役も果たしたりもする。これにはマザーグースに縁の薄い日本人の私も舌を巻いた。

以下、収録作品に個別に触れていく。

◯「むしゃむしゃ、ごくごく」殺人事件…50年間一度も家から出なかった体重400ポンドの老婆が毒殺された。被害者の心の密室の謎を解くホワイダニットがユニーク。

◯カバは忘れない…殺された動物園の園長の側にはダイイングメッセージとペットのカバの死体が。キッドのパンクな人種差別批判にも注目。

◯曲がった犯罪…ゴミをアートにする芸術家のアトリエで1人の実業家の死体が石膏像として発見される。曲がった犯人の曲がった動機にキッドの怒りが爆発する。有栖川有栖激賞の一作。

◯パンキー・レゲエ殺人…人気レゲエ・バンドを襲う10人のインディアンの見立て連続殺人。ラストが綺麗。

そしてもう一つの魅力が破天荒な事件に負けないキャラクターだ。七色に染めたモヒカンを持つキッドはその見た目に反して頭脳明晰なパンク刑事であり、世間知らずの探偵士たちの足元の覚束ない推理をニヒルに笑い飛ばす名探偵らしからぬ名探偵っぷりがカッコいい。その相棒で壊滅的に常識が欠如したピンク・Bは捜査現場の物品ちょろまかしの常習犯だがそれが事件解決に繋がったり険悪な雰囲気の中でも空気の読めない愛くるしさを発揮していて作中の緩和材の役目を果たしている。他にもシャーロック・ホームズの隠し子と自称する(パラレル英国にはそんな探偵が3人はいるらしい)シャーロック・ホームズ・ジュニアのおじいちゃんは張り切って現場を仕切ろうとするが空回りばかりしていて愛おしい。今のところ、メインレギュラーはこの3人だがシリーズが進むにつれて他の名探偵に関連のあるキャラクターが登場するかが今から楽しみだ。

キッド・ピストルズの名前の由来になったであろうセックス・ピストルズの名はまだ作中に登場していない。このパラレル世界のピストルズはどうなっているのだろうか。案外シド・ヴィシャスは死んでおらず、解散もせずに元気にやっているのかもしれない。そうしたらWピストルズの共演とかもあったりするのだろうか。そんなことを考えながら次作のキッド・ピストルズの妄想を待っている。

 

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書影。光文社文庫刊。作者のエッセイ、インタビュー、解説まで収録された豪華版。

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死んだ人間が生き返るようになってしまった奇妙な世界の葬儀屋一族で巻き起こる連続殺人。自らも死人となってしまったパンクな主人公グリンと破天荒でキュートな恋人チェシャと事件に立ち向かう。最近完全版で復刊された。

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マザーグースをミステリ界のヒットナンバーにのし上げたヴァン・ダインの僧正殺人事件。

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クリスティの代表作のひとつであるそして誰もいなくなった。10体のインディアン人形が童謡とともに消えていく童謡殺人の代名詞。

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カバは忘れないの元ネタ。そう言えばクリスティ全作読んだKたんがオススメしてくれた5作くらいの内に入ってた。読んでみたい。

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横溝正史が「俺も童謡殺人書きてえなあ〜、でも日本にはそれっぽい童謡とかねえよなあ〜、じゃあ童謡ごと作るか!」と張り切った悪魔の手毬唄。名作。ちなみに獄門島も童謡の代わりに俳句を使った見立て殺人。

 

「王とサーカス」米澤穂信

 

ナラヤンヒティ王宮殺害事件。2001年、ネパールの王宮にて王太子ディペンドラが国王ビレンドラを含む9人の王族を射殺し、自らも自殺した事件。この衝撃的なニュースによって世界各国から注目され、国民に激震が走り悲しみの底に落ちていたカトマンズにフリージャーナリストの太刀洗万智は偶然居合わせた。

 


眠りに落ちるきわ、いまがいつで、自分がどこにいるか不安にならないよう、まじないのように口にする。

二〇〇一年六月一日。カトマンズ。トーキョーロッジ二〇二号室。

わたしのくちびるは瞼と同じように重かった。だから呟きは、たぶん声になっていない。

 


愛知の新聞社を退社し、フリージャーナリストとなったばかりの太刀洗はネパールの観光事情を取材するべくカトマンズの下町にあるトーキョーロッジに滞在していた。そこで彼女はアメリカ人の観光客のロブ、日本人の破戒僧・八津田、インドの商人シュクマル、そして現地の土産売りの少年サガルと交流を深める。異国情緒あふれる街並で彼女は自分の仕事を淡々と進めていく。

しかし、王宮の事件が起きてしまう。記者人生の中でも最大のスクープを掴むチャンス。彼女は宿の女主人と知り合いの軍人から事件当夜の王宮の様子を聞くことに。だが、軍人から投げかけられた言葉は彼女をジャーナリストとして深く揺さぶる。自分は人の悲劇を娯楽に変えてしまうサーカスの座長に過ぎないのか。彼女は懊悩する。

王宮前での軍による民衆の鎮圧などを取材し、さらに深まる彼女の苦悩。そして、彼女は無惨な姿で息絶えた軍人と対面する。この男は自分が取材したことによって殺されてしまったのか。男の死と此度の王宮殺害事件は関連があるのか。そして、自分がこの事件を報道することの意味とは。太刀洗は限られた時間の中で自分の記事を完成させるべく調査を開始するが…。

本作は太刀洗が高校生だったさよなら妖精と彼女のフリージャーナリストとしての活躍を描いた真実の10メートル手前の中間点の時間軸の物語であり、さよなら妖精ではサブヒロインだった太刀洗を主人公に据えたベルーフシリーズの作品である。

まず最初に。とんっっでもない作品である。ハードボイルド小説のような描写でネパールという日本人に馴染みの薄い国の様子を克明に描き、実際に起きた王宮殺害事件を正確な時間経過で描写としていることは作者のこれまでの力量からして納得の出来であったが、それにジャーナリズムの抱える問題点に深く切り込みながら本格ミステリを共存させ、さらにさよなら妖精に引けを取らない深い悲哀を感じずにいられない圧巻のラストまでひた走る物語運びを完遂している。どこにも無理がなく、すべてが密に構成されている。作者が最高傑作だと自負するのも首がもげるくらい頷ける。

作中で太刀洗は、事件を報道することの意義と危うさについて絶えず自問自答している。時系列的に後の真実の10メートル手前においても彼女はこの命題と向き合っているが、この時点の彼女が抱く疑心はより曖昧で実感が伴っていない。

彼女が取材する軍人は彼女に「なぜ日本人のお前がこの事件を報道するのか。ネパールの恥とも言える事件をネパールと縁の薄い日本人のお前が」と問いかける。また「お前の記事は人に振りかかる惨劇を無責任な読者の娯楽にしてしまう」とも。

ミステリにおいて探偵が事件の真相を解明することの危うさは幾度となく言及されてきた。真実は必ずしも残された人を幸福にするものではない。彼女自身、さよなら妖精のとき友人の守屋が彼女たちの異国の友人が巻き込まれた事件とも言える状況の真相を解明するのを拒んだ側の人間だ。それはそうすることによって彼らが深く傷つくことを知っていたからだ。しかし、今度は彼女が真相を究明する探偵、ジャーナリストとして守屋と同じ側に立ってしまった。そして、彼女は高校生だったときに守屋に突きつけてしまった真実を暴かれる側の悲鳴をその身で受けてしまうこととなる。そのラストはとてつもなく深く、悲しい。

物語の冒頭に印象的な描写がある。

 


ガネーシャが商売繁盛の神だという知識はあった。いま、自分の商売について何か祈るべきことがあるだろうか。どうすればわたしの仕事は成功と言えるのだろう。

つまりわたしは、ガネーシャに何を祈るべきか、それさえ知ってはいないのだ。神頼みをするにも早すぎる。

 


彼女はこの事件で成功したのだろうか。それは彼女自身まだ掴めていない答えだ。

 

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書影。創元推理文庫刊。

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新米女記者が鉄屑捨て場に遺棄された女性の死体を調査する内にユダヤ人組織と相対することとなるジュリア・ダールのインヴィジブル・シティ。

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どことなくネパールっぽい異国でナルホドくんとオドロキくんが活躍する逆転裁判6。真宵ちゃんが3から久しぶりに登場する。サガルっぽい少年ガイドも出てくるし王族殺害事件も出てくる。王宮殺害事件をモチーフにしてるんじゃないかな。7はまだか!