2018-07-01から1ヶ月間の記事一覧
私たちの世代はやはり金田一少年世代なのでその祖父である金田一耕助も当然大好物である。しかし、長い間、横溝正史の金田一耕助の作品群は読むもの、というより観るもの、というあまり褒められた読者ではなかった。というのも、金田一耕助と言えば黙ってい…
日系人作家ジョー・イデのデビュー作で、エドガー賞の最優秀長編賞にノミネートされたのを皮切りにアンソニー賞、シェイマス賞、マカヴィティ賞のミステリ新人賞を総なめにした話題の作品だ。 アイゼイア・クィンターベイ。LAのロングビーチの黒人コミュティ…
神奈川県警捜査一課の刑事でありながら警察の規律や仲間意識に乏しいハードボイルドな一匹狼。今日は非番だと嘯き、周囲の声を聞き流して自分が狙いをつけた事件を追って横浜の街を歩く。その姿はまるで往年の私立探偵。日本のチャンドラー、矢作俊彦が生み…
なんとなく女の子の話が読みたくなって、積ん読の中から引っ張り出してきた。本作の主人公はヘルヴァ。生まれつき畸形であった彼女は申し分のない頭脳を認められて、肉体を捨て去り、脳を金属の殻に閉じ込めた殻人(シェルパーソン)として生きることとなる…
毎年大晦日に放映される国民的娯楽番組「ミステリー・アリーナ」。出題された推理小説の真相を出演者同士が推理を競わせ、正解者には莫大な賞金が与えられる。今年は属性不問、厳しい選抜を潜り抜けた14人の真のミステリマニアたちが勢揃い。そんな彼らに与…
またか、という感じだけどそれくらい面白かったんだよ、北山猛邦。と言うわけで氏の『城』シリーズの記念すべき一作目である。最前の感想で言った通り本作で氏はメフィスト賞を受賞した。 舞台は太陽からの磁気嵐によって1999年9月に世界が滅亡することが判…
ある日、私立探偵であるリュウ・アーチャーの事務所に退役軍人のブラックウェル大佐とその美しい後妻が訪れる。二人の娘のハリエットが素性の知れない画家の男をメキシコから連れてきて、のぼせ上がっているという。ハリエットは実の母親に捨てられて以来屈…
有栖川有栖をワトソン役に据えた氏の作品は学生アリスシリーズと作家アリスシリーズがあるが、本作は後者である。推理作家のアリスと臨床犯罪学者の火村英生がホームズ役に犯罪のフィールドワークとして事件を解決する本シリーズは今作で25周年になる。その…
二階堂黎人作品を読むことを実は憧れながらもずっと手が伸びずにいた。氏の作品の代表作としてあまりに有名な人狼城の恐怖があるが、その全貌は全4巻、4000ページにも及び、ギネスブックに登録された世界最長の推理小説なのだ。京極夏彦の最厚作品である絡新…
ツイッター界隈で話題になったヒューゴー賞作家によるSFスチームパンクである。舞台は蒸気機関が史実よりも発達した19世紀アメリカの都市・ラピッドシティ。街の高級娼館で縫い子(娼婦の隠語。アメリカでは実際に表向きは服を仕立てる縫い子として娼婦に客…
かねてより中国ミステリ界の振興に大きく尽力してきた島田荘司氏の推理小説大賞受賞作家による華文ミステリの話題作である。 物語は2013年の現代の香港からイギリスからの返還期の混乱、権力が腐敗した占領統治時代、1967年の反英闘争の騒乱の時代までをひと…
シャーロック・ホームズを扱ったパスティーシュ(文体模写、広義にパロディ)は本当に数多くある。その歴史は古く、ドイルの存命中にモーリス・ルブランが書いたルパン対ホームズが最も有名だろうか。他にも毒入りチョコレート事件のアントニィ・バークリー…
2018年上半期に読んだ本 屍人荘の殺人 今村昌弘 樽 F・W・クロフツ サマー・アポカリプス 笠井潔 ニューヨーク1954 デイヴィッド・C・テイラー うまや怪談 神田紅梅亭寄席物帳 愛川晶 三題噺 示現流幽霊 神田紅梅亭寄席物帳 愛川晶 幽霊塔 江戸川乱歩&宮崎駿…
恥ずかしながら初乱歩である。江戸川乱歩が日本の代表的名探偵・明智小五郎の産みの親であることは百も承知だし、映像化された作品は何本か観ているし、筋を知っている作品もいくつかある。満島ひかりの明智小五郎、超良かったですよね。しかし、乱歩を活字…
ユーゴスラヴィアから日本に来た少女・マーヤが四人の高校生と過ごすきらきらとした日向のような日々と彼女が日本を去った後に訪れた夕闇のような寂寞の時間。その四人の高校生の中の一人、美しいロングヘアと無愛想にも捉えられる起伏の少ない美貌の中に途…
かなり前にクローズド宗教施設モノが好き、って話の流れで後輩のUくんにおススメしてもらって買ったまま今まで積んでた一作。読んでみて納得のクローズド宗教施設モノで、大変意欲的な構成の良作だった。Uくん、本当にありがとう。 奇跡がこの世にあることを…